学生への指導について

  「美しく声を響かせるには」 - 声楽を志す人間にとって、一番大切なテーマですね。

shidou1  声楽では、よく「頭を開けて歌うように」とか「喉を開けて」「眼と眼の間から声を出すように」とかの表現で説明されています。もちろんイメージ上の表現な訳ですが、これらの説明を受けて正しい発声に到達する学生もいらっしゃる一方で、なかなかイメージがつかめないという方もいらっしゃいます。そういう方の場合、じつは全身の使い方に課題があるケースが少なくありません。
 そこで私はレッスンにおいて、理想の発声を実現するためにどう身体を使っていけばいいのかを、出来るだけ具体的な表現で伝えることを心掛けています。

    例えば身体、特に腹筋背筋まわりが使えていない学生に対しては、前方からお友達に両肩を押してもらい、それに抵抗して立ちながら発声したり、トレーニング機器を使shidou2いながら正しい発声の感触を掴んでもらったりします。

 同じく身体が使えていない学生でも、特に足腰まわりに課題がありそうな場合には、両膝の間にボールを挟んで、それを落とさないように内転筋(内股の筋肉)に力を入れながら発声練習をさせることもあります。
 頭声をつかむために口を開けたままハミングして響きの位置を確認して頂いたり、発声時に身体に力が入ってしまう方には歩いたりスキップしながら発声して頂くこともあります。

 このように、正しい発声法を掴んで頂くためには、学生一人ひとりの理解度合い、身体の成長度合いなどを見ながら、それぞれの学生に合う進め方を考え、それを具体的な言葉で分かりやすく伝え、修得させていく必要があります。

 さらにこのことは発声法に限らず声楽の様々な技術すべてに言えることです。声楽は自らの身体を楽器化するものであり、同じ楽器は世界を見渡しても一つもありません。そのような世界に唯一つの楽器を作り上げ、同時にその使い方も伝えていくのが声楽の指導であると考えております。

 そして最後にもう一つ、大切なことをお伝えしなければなりません。
東京音楽大学の学則には、<幅広い教養と社会常識を備え、これからの国際社会のさまざまな局面に対応し貢献できる人材の育成>というミッションが掲げられています。
私も学生の指導に当たっては本学則を遵守し、演奏家、音楽教育者としての専門スキルの養成に留まらず、今後の国際社会に貢献できる幅広い教養と社会常識のある学生を育てることを心掛け、そのような教育を実践していきたいと考えております。

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