Q/A集


受験について

基本について

体調管理について

大学生活について




受験について


  (※)は、2012年にある受験雑誌の取材に、東京音大声楽試験官としてお答えした内容です。

音大入試の声楽実技試験で評価の高い演奏とはどのような演奏でしょうか?
大曲に挑むというようなことはせず、年齢にあった選曲をし、無理のない正しい発声で音楽的に歌って下さることを第一に心掛けてください。(※)


テクニックで一番重視していることは何でしょうか?
発声の正しさと共に、音程 リズムの正確さ、そしてイタリア語 ドイツ語など それぞれの歌詞を正しく発音することなどの基本的なことを重視しています。(※)


表現力で一番重視していることは何でしょうか?
器楽と違って、声楽には言葉=歌詞がついています。「詩」の内容を理解し、自分の言葉として相手に伝わる表現が出来ているかを重視します。「相手に伝わる表現をしようとする気持ち」を持って歌い、それをしっかりとこちらに伝えることを心がけてください。(※)


表情は採点に影響しますか?
明るく楽しい内容の曲なのに暗く沈んだ表情というのは不自然ですし、悲しいシーンを歌えば自然とそれなりの表情になります。詩を味わって歌えば、おのずと表情はついてくると思います。(※)


外国語の歌曲を選択する場合、どの程度発音を重視していますか?発音が不得意でも、それ以外の部分(テクニックや表現力など)を優先して評価しますか?またイタリア歌曲よりもドイツ歌曲やフランス歌曲を選択することは不利になりますか?
ドイツ語、フランス歌曲を選択して不利になることは全くありません。現にイタリア歌曲以外で合格されている方もいらっしゃいます。例えばフランス語の鼻母音、ドイツ語の子音など難しいものもありますが、受験生の時点で完璧さを求めることはありません。
発声、音程、リズム、音楽性などすべてのものを総合して評価します。(※)


願書、調査書、成績表などの情報は見ていますか?
それらのものは総合判定の際に参考にしています。実技試験に関しては関係ありません。(※)


試験の際、服装やステージマナーについてもチェックしていますか?
声楽実技の服装は、ドレスや華美な服を着る必要はありません。
制服があれば制服でも構いません。人前で演奏することを前提に、常識的な服装でいらして下さい。受験ということで皆さん緊張していらっしゃいますから、ステージマナーを徹底することは難しいと思います。ただ、できるだけ良い表情で演奏して下さるとより良いアピールになりますね。強ばった表情だったのでマイナスなどということはありませんからご安心下さい。(※)


東京音大の声楽専攻ならではの魅力は何ですか?
本学の声楽専攻は、声楽演奏家コースと声楽とにわかれており、各コース、それぞれのアプローチでオペラと歌曲を総合的に学ぶことができます。声楽演奏家コースの舞台基礎演技法の授業では、1年次からオペラか歌曲のどちらかを選択し、専門的に学ぶことができます。また声楽では、3年次からオペラと歌曲(ドイツ、フランス歌曲)を同時に学んでいくことができます。(※)


受験当日の体調不良について教えてください。
①体調不良などで声が出ていない場合、聴いていてわかりますか?また分かる場合はそのことを考慮して採点しますか?
②体調不良などの理由によって、試験を延期することは可能ですか?
①風邪などの体調不良は数フレーズ聞けばわかります。しかしこれを理由に採点を甘くすることはありません。
②演奏する日に合わせてコンディションを整えるのも 演奏家として大切なことですから、試験日程を延期することはありません。(※)


受験生にひとこと
声楽は器楽と比べると始める年齢が遅く、なかには本格的な勉強を始めて短い期間の受験準備で合格される方もおり、入学時点での学生のレベルには幅があります。
しかし、レッスンでのきめ細やかな指導や、興味深い授業、色々なプロオケとの合唱などでの共演、また池袋駅や雑司ヶ谷駅に徒歩数分で行ける地の利の良さを活かして、授業やレッスン終了後に都内で開催されるコンサートに出掛けたり、学生同志で自主的にオペラ公演を催したりと、音楽的刺激に満ち溢れた本学で4年間学ばれると、卒業時にはそれぞれ別人のように上達されています。やる気を持っていれば、たくさんのチャンスが皆さんを待っています。皆さん頑張ってください。(※)


受験を控えている高校3年です。現在、1日の練習時間は3~4時間なのですが、この練習量は妥当でしょうか?
 3~4時間というのが実際に声を出している時間でしたら、かなり長いですね、声帯の疲労が心配です。ただし、どの位の時間が良いかというと本当に人さまざまで、一概には言えないのです。いずれにしても、必ず休憩を入れながら練習してください。スポーツと同じで、声帯にもクールダウンが必要です。40分歌ったら10~15分休む、などですね。いずれにしても声は無駄に使わず、歌詞の意味を確認したり、声を出さないイメージトレーニングを増やすようにしてください。そして実際に声を出しての練習は本番で歌っている位の集中力で真剣にやってください。


受験を控えている高3です。レッスンは週何回くらいが適切ですか?
週何回くらいのレッスンが良いかというと、これも人さまざまなので一概には言えませんが、高3であれば週1回は必要ですね。机の上での勉強とは違い、身体に覚えこませないといけない実技を伴うものは、あまり時間が空いてしまうと正しい方向からずれてしまうことがあります。


音大声楽科は、ピアノを習っていないと入れませんか?
課題曲にあるごく基本的な作品が弾ければ心配はありません。なお東京音大の場合、入学後も引続き、副科ピアノを2年次まで学ぶことが出来ます。ピアノが弾けると、声楽曲の伴奏部分をピアノで弾いてみることで、歌の旋律の和声感が養われますし、いずれ自分が教える立場になった時には必ず必要になりますので、少しでも練習しておくことが将来に繋がると思います。


志望校の先生につく必要はありますか?どうすればつけますか?
志望校の先生につく必要はありません。 各大学に合格する実力があれば合格できますし、なければ合格しません。ただ、自由曲の選曲の傾向を知る意味では、その大学の先生につくことも良いかもしれません。東京音大の場合、夏期や冬期の講習会では申込み時にレッスンを希望する先生の名前を記入していただければ、(100%ではありませんが)ほぼその先生のレッスンを受けることができます。


音大(声楽)受験について教えてください。
歌曲の実技試験では、何番まで歌えばいいですか?
通常、入試要領に記載してありますが、心配な場合は大学の入試課に問い合わせください。


この春に高校2年になります。今からソルフェージュやピアノを習っても声楽科に入れますか?どれもやったことがありません。
本人のやる気次第ですが、一生懸命やれば可能だと思います。大学に入学されてからも授業で続けて勉強していくので、そのための基本的能力をつけておいてくださればいいのです。


高校生でも歌えるソプラノのアリアを教えてください。受験に勝つためには、アリアを歌わないといけないのでは、と考えています。
必ずしも受験でアリアを歌わないと勝てない、というものではありません。歌曲の中にも、高いテクニックの必要な、音域の広い作品があります。ただアリアを勉強することも大切ですので、まずはモーツァルトの「フィガロの結婚(Le nozze di Figaro)」や「コジ・ファン・トゥッテ(Così fan tutte)」などのアリアを歌ってみることをお薦めします。もう少し進んでいらしたら、さらに色々ありますね。


音大声楽科の受験を考えています。副科はピアノです。家にグランドピアノは必要ですか?
グランドピアノは必ずしも必要ありません、アップライトピアノで十分です。ふだん電子ピアノで練習していて合格された方もいらっしゃいます。ただしタッチが違うので時々、あと受験前だけはグランドピアノかアップライトピアノで練習する必要があります。


受験内容に面接があるのですが、声楽科の面接ではどんなことを聞かれるのですか?
東京音大の場合、一般入試では面接はありませんが、推薦入試の場合は面接があります。例えば、高校ではどういう生活をしていたか、なぜ声楽を選んだか、どんな大学生活を送りたいか、大学卒業後の進路、など聞かれるかも知れませんね。



基本について


高2です。1年ほど前から声楽を習っており、現在月2回ペースでレッスンを受けているのですが、息もれのするかすれた声でしか歌えません。 大きな、響く声を出せるようにするには毎日どんな練習をしたらいいですか?
声楽を始めて1年でしたら、特に気になさらないで、いま師事している先生の教えてくださることに真剣に取り組んでください。実際に声に出して練習するほかに、ブレスコントロールのための身体トレーニング(体操)も必要です。


まもなく高2になります。声楽を習いたいと思うのですが今からやって音大にいくことはできるのでしょうか?
大丈夫です。私も本格的に声楽を始めたのは高2からです。声楽で音大を受験する場合、大学によって多少の違いはありますが、一般入試では声楽実技 + 副科としてのピアノ実技(比較的平易なピアノの曲を弾くこと。モーツァルトなどのソナチネを一曲) + ソルフェージュ(楽譜を見て歌う訓練→「初見視唱」、ピアノで弾かれた旋律を楽譜に書き取る→「聴音」など) + 楽典(音楽の基本的な理論のペーパーテスト)、そして語学などの学科が必要です。ただし推薦入試、AO入試などでは必要ない場合(実技+面接のみ等)もあります。あとはセンター試験が必要な場合もあります。


高1女子です。これから声楽を習いたいと思います。話し声が低いのですが、ソプラノを歌うことはできますか?
話し声が低くても、ソプラノの可能性はありますが、メゾソプラノかも知れません。歌う声と話す声の高さは、必ずしも一致しません。貴方の持ち声の一番美しく響く音域を生かすよう、貴方の先生と一緒に決めるのが良いと思います。


普段は歌えているにもかかわらず、本番になると声がカスカスになってしまいます。声量を上げようとすると、かすれたり裏返ったりして、音程も声量も全くコントロールできなくなります。どうすれば本番でもちゃんと歌えるようになりますか?
どなたでも同じだと思います。声楽だけでなく、ピアノでもバレエでも、人前でパフォーマンスをする場合、いつも通りに行かないところがあって当たり前です。
毎日の練習の最後にビデオで録画しながら、本番だと思って真剣に歌ってみてください。そして再生してみて、先生の教えは守れているか、より良くするにはどうしたら良いか、考えてください。そしてなるべく人の前で歌うチャンスを作ることです。


巻き舌が出来ません。一瞬だけなら出来るのですが、続きません。長く巻き舌がつづくコツはありますか?
巻き舌が出来なくてもダメとは限りません。 tr や pr など、 t や p の子音を r の前に付けて発音していると、巻きやすくなります。舌根やアゴに無駄な力を入れず、息を流すようにすると、だんだんと続くようになります。 日本語を話している日常生活の中で、ちょっとふざけて r を巻くように努めていると、突然うまくなることもあります。ふざけることで、脱力が出来るのですね。


喉に力が入っている、と注意されます。 低い音になると急に声が出なくなります。これを直せる練習方法はありますか?
先生がおっしゃる通り、無駄な力が入っていると思います。特に低い音を出そうとすると声を押してしまい、声帯が上手く使えなくなることがあります。ではどうすればいいかですが、
とるべき方法はその人の身体によって様々で、一概には言えません。実際の対面レッスンの中で調整していくしかありません。


練習中にアゴが上がってきてしまいます。どうすれば直りますか?
そういうケースは、姿勢が悪いことが原因になっている場合が多いです。姿勢を正しくすることを心掛けてみてください。 鏡で姿勢をチェックしながら練習してみてください。アゴだけではなく、背骨や肩甲骨の位置が正しいかチェックしてください。


練習が大雑把なのが歌に出ている、と言われています。どういう点に気をつけて練習すればいいでしょうか?
先生の教えてくださるアドバイスを楽譜またはノートに全て書き取ってください。何回かレッスンして頂くうちに、1つのフレーズの中にも先生のアドバイスがたくさん出てくるはずです。その1つ1つがきちんと出来ているか自分で確認しながら練習してください。


ブレスをしないと息が続かないけれど、メロディの途中なのでブレスをしたら遅れてしまう。こういう場合、どのようにブレスすればいいですか?
ブレスをするとどうしても遅れがちになるので、ブレスをする前のフレーズの息の配分に気をつけてください。具体的にどうすればいいかですが、文章でお伝えすることは難しく、実際の対面レッスンの中でお伝えしていくしかありません。


高音が出ません。前に合唱をやっていたために、高音になると合唱声になってしまいます。どうしたらクラシックの高い音が出せますか?高音を出せる身体作りについて教えてください。
人の顔が皆違うように、高音の出し方も「こうすれば皆、上手くいく」という同じ方法はありません。とは言え、軟口蓋が上がり、身体がバランス良く使えるようになっていくと、自然に高音が決まるようになってきます。軟口蓋が上がるための1つのヒントとして、ハッピーサプライズの時の口の中、頭の感じを再現してみてはいかがでしょうか。


音程をうまくとれるようになるには、どうすればいいですか?
音程が上手くとれないケースとしては、①ソルフェージュ能力が不足している場合、②頭で考えている音程が、声帯が上手くコントロール出来ないために上手く出せない場合 とがあります。前者の場合はソルフェージュ能力の強化が必要ですし、後者では発声の面の訓練が必要です。発声の基本的なレッスンを続けているうちに、自分の思う音程が取れるようになります。



体調管理について


高音を出し過ぎたときの喉をケアはどうすればいいですか?
ハイCを出し過ぎて、翌日まで引き摺るような場合、どういうケアをすれば効果的ですか?
まず声を出さない・喋らない、です。電話も良くないです。刺激のある食物は避け、水分はこまめに取ってください。そして睡眠をしっかり取ることが大切です。翌日まで引きずるようでしたら練習を控えてください。


声楽家の方が普段から気をつけている体調管理面のことは何ですか?こういうことが喉に良い、こういうことは喉に良くない、というものがありましたら教えてください。
人により差があると思いますが、私が気をつけていることを挙げますと、スカーフ、ホカロン、加湿器は不可欠ですね。夏でもエアコンの強く効いた部屋に入ることがあるでしょうから、大判のスカーフは必需品ですね。あとは他の方からの質問に回答している内容もご参照ください。


歌い過ぎて喉を痛めてしまいました。喉を痛めてしまったら何日くらい歌うのを控えたほうが良いですか?のどスプレーは有効ですか?
何日くらい歌うのを控えたほうがいいかは、人さまざまですし、痛め方の度合いもありますので、一概には言えません。マスクは風邪予防と共に、冷たい外気が直接喉に入るのを防ぎ、乾燥を防ぐという効果があります。


辛い食べ物や炭酸系の飲み物が好きなのですが、良くないですか?
唐辛子系は喉が辛みで腫れてくる場合があるので、あまり辛い食べ物は私はお薦めしません。炭酸系の飲み物は、私の場合、普段は気にしないで飲んでいますが、本番の前は控えています。人にもよるかと思います。


私は花粉症がひどく、外に出るとマスクや眼鏡をしていても、喉がイガイガして眼が痛くなります。声楽家の方はどのように乗り切っているのでしょうか?
ひどくなる前の早い段階からの治療が大切だと思います。病院のアレルギー内科でお薬を処方してもらってください。


私は高校の音楽科で声楽を学んでいます。 毎日少なくとも1時間は練習をして、腹筋背筋30回、ストレッチをしています。先生にはまだ腹筋が足りないと言われているのですが、どのようなトレーニングをすればいいのでしょうか?
どういう補強運動が必要かは、人によりさまざまです。その人の身体のバランスがどうなのか、どういう筋肉が足りないのかが分からないと一概には何とも言えません。直接その人を見て判断する必要があります。


音大(声楽)受験生です。受験シーズンの乾燥期の喉のケアについて教えてください。どのようなことに気をつければいいですか?
加湿器とマスクを使うことを心掛けてください。特に就寝時には注意してください。なお、地方から受験のため出てきてホテルに宿泊する場合は、予約時に加湿器を頼んでおくことです。


一番喉に効果があるのど飴は何でしょうか?
私からはどれが良いとコメントすることは出来ませんが、私は昔からあるA飴、Nのど飴を愛用しています。プロポリスのど飴がお好きな方もいらっしゃいますね。飴をなめるのが喉に良いのは、口の中に食べ物が入ってくることで唾液が出て、結果的に乾燥を防いでいる、ということもあると思います。




大学生活について


音大の声楽科では入学後、オペラを歌う以外にどんなことを学ぶのですか?声楽科の学生の1週間のスケジュールなど教えてください。
東京音大声楽専攻の学生は、卒業までの4年間に必修科目、選択科目を合わせて124単位を取得する必要があります。ただし1年間に取ることができる単位は教職単位を除いて48単位までと決まっています(注:単位取得の詳細は必ず最新の学生便覧をご参照ください)。

単位の取り方は人によってさまざまです。1年次から目一杯とっている方もいらっしゃる一方で、選択科目の授業をうまく選ぶことで、1日丸々アルバイトの日を設けている方もいらっしゃいます。ご参考まで、学部1年生、3年生の時間割の例をあげておきます。

  声楽科1年 Aさん
  声楽科1年 Bさん 
  声楽科3年 Cさん (教職科目選択なし)
  声楽演奏家コース3年 Dさん


声楽科1年Aさんの1週間(前期)






声楽科1年Aさんの1週間(後期)





声楽科1年Bさんの1週間(前期)





声楽科1年Bさんの1週間(後期)





声楽科3年Cさんの1週間(前期)





声楽科3年Cさんの1週間(後期)





声楽演奏家3年Dさんの1週間(前期)





声楽演奏家3年Dさんの1週間(後期)






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